2016年 02月 07日
芥川賞「異類婚姻譚」を読む
同じく、だいぶ昔に出た河合隼雄との対話集も斜め読み。図書室には例の「村上ラジオ」シリーズ三冊があったが、これは既読。「雑文集」というのも面白そうだが、活字が小さいのがネック。
続けて数冊読んで、おおよそ彼のものの考え方が判ってきた。日本の小説はほとんど読んでいないそうで、第三の新人のものを少々という程度らしい。読みながら、そう考えるからこういうスタイルになるのだなと納得しながら読んでいた。
元谷有希子「異類婚姻譚」(講談社)を読む。作者は金沢出身。彼女の通った高校は私の職場からほど近い。高校では演劇部だった方で、上京し、演劇者としてすぐに頭角を現した。部の恩師が私の知人で、彼女が二十代のころ、その方から彼女のことを聞いたこともある。このあたりではだいぶ前からの有名人であった。小説も書きだしたという話もその時聞いていた。以来、地元の本屋でも時々新刊が並んでいたのを見た覚えがある。
さて、今回、書店の営業さんが、明日発売で、初版が並ぶとのことだったので、すぐに注文したが、翌日、たった五千部しか印刷されていなかったので、一気に足りなくなった、今、二刷を増刷中なので待ってほしいと言われ、結局、数日後に第二版が手元にやってきた。 本当に緊急増刷したようだ。ということで、芥川賞をとった本を私が手にした中では、超特急に早い部類である。
内容は読みやすい。夫婦は似てくるという話からスタート。ちょっとずつ、非現実的な要素が混じってくる。安部公房的というか「世にも奇妙な物語」的というか、最後に花になるというのは、なんだか漱石の「夢十夜」をも連想させる。夫婦お互いの依存関係と逆転の寓意の物語。他に短編が三つ。
受賞は、地元では明るい話題だった。私は観なかったが、例の恩師が地元テレビでコメントしていたそうである。前回受賞の芸人又吉氏の「火花」のように大ブレークしてほしいもの。昨年子供が生まれたばかりというから、ちょっと量産体制という訳にもいかないようだが、これからが正念場。頑張ってほしいものである。