SNSで観るアイドル

 新潟のご当地アイドルNegiccoに興味をもった理由として、その苦労の歴史を抜きにしては語れない。今の世、ネットに大量に映像があって、スーパーの催事場で地道に営業しているところから、ずっとその歴史を辿ることができる。昨年は日比谷野音、目指すは日本武道館。苦節十三年(長!!)。
 そうした歴史は多くのグループが味わっている。「AKBに有らずんばアイドルにあらず」の風潮の中、非AKBでスタートすること自体、すでに大ハンデである。
 そのうちのひとつ、「ベイビーレイズJAPN」は、中でも、しっかりした事務所の所属、メジャー・レコード会社からの発売。売れっ子アイドルが先輩としてPR役をつとめるという恵まれたスター トを切った。最初はMCや対応も上手くなく、それを練習する映像が沢山アップされている。踊りの下手な子はその練習で泣いていたりする。そうして、徐々に自信にみちたパフォーマンスができるようになっていく。映像もしっかり編集されており、人気連ドラ「あまちゃん」がらみのスマッシュ・ヒットもある。Negiccoファンから見ると羨ましい限りのサポート。それでも武道館は半分しか埋まらない。最近は、幼さが影を潜め、徐々に完成された大人のユニットを感じさせる。
 と、知ったかぶりで書いているが、こうした各シーンを、ネットサーフィン数日で、さっさと追体験でき、ベテラン・ファン面できてしまうところが現代的状況である。
 もうひとつ、「アイドルネッサンス」。ソニー・エンタメ所属という恵まれたスタッフ。中高生で初々しい 。リリースも順調。先月、HNKの番組に初めて出た。映像をみると、初めての経験を、中高生ノリでキャアキャアいいながらこなして身につけている真っ最中とった感じ。自分たちのMVを初めて観て感激している様子など、細かい舞台裏が、逐一、映像で配信されている。
 こうしたネット環境を利用した宣伝浸透の仕方は、二〇〇〇年あたりから本格化したそうで、アイドルは「SNS利用型アイドル」に変質したとアイドル論に指摘されている。例の「会いに行けるアイドル」というのも、この身近さの延長線上で考えられた仕掛けである。

 アイドル曲を聴いて思うのは、正直、曲自体は大したことのないものが多いということ。大抵は勢いとダンスの振付でなんとかもっていて、音楽としてじっくり聞くレベルとは言い難い。でも、ウェブで、こうした苦労の現場の映像や普段のおしゃべりを聞いているうちに、一人一人のことが判りはじめ、ご贔屓が出来て……という流れで、だんだん好きになる。夜、そうした映像を次々と観ていると、愚妻もおこぼれで聞いていて、二人で、結局、こうした「成長物語」 に、ファンは一緒に付き合っていきたいと思うのだろうねえという話になった。悔しんだり、泣いたり、笑ったり。彼女らと時を共有したい気持ち。逆に言うと、成長が止まった段階でファンは他のアイドルに移る。そんな「泳ぐのを辞めると死んでしまうマグロ」のような存在がアイドルなのだろう。
 だから、彼女たちが一生懸命やっている姿がなんと言っても大事で、映像は最重要、音楽自体の重要度はそれより少し落ちることになる。とすると、特に、はまった訳でもない一般人は、曲の善し悪しの第一印象と見た目で判断するから、大概はメディア露出の程度で決まってしまって、ネットレベルでは、何時までたっても、はまった人向けの「観る人が観る」というレベルから脱出できず、広がらないという悪循環に陥ることになる。
 また、時にいい曲を得て、これでビックになれるだろうとファンは期待しても、現状、若者音楽番組の壊滅的状況から、メディア発表の場があまりに少ない。例えば、若者の音楽を紹介するNHKの「ミュージック・ジャパン」は、誰も起きてない日曜深夜枠で、それもこの三月で終了である。
 こうして巨大で露出過多のAKBの残り枠を非AKBが分け合っているだけで、何時までたっても芽が出ない。これは、たとえると、電波が二波あっても、ちょっとでも強い電波が勝利し、片方を極端に押さえつけてほどんど聞こえなくするという「電波の抑圧効果」みたいだと思う。AKB、桃クロ、モー娘。以外、あれだけの大量にアイドル集団がいるのに、国民レベルになったグループはない(に等しい)。解散してしまった「ベリーズ工房」や「アイドリング」など、この世界では有名ユニットだったが、一般人無作為抽出百人でいったい何人の人が知っているのだろう。

 ただ、曲が今ひとつのグループが多い中、アイドルネッサンスの曲は、古い楽曲をリニューアルするコンセプトなので、懐かしいもの(例えば「初恋」)もあり、知らない曲も良い曲(例えば「You」「Funny Bunny」)が多くて、オジサンでも大丈夫であった。何度聴いても楽しめると見極めて、Negicco以外で初のアイドル・フルアルバムを予約することにした。ポチリ。
 このオジサン、何やっているのだろうとご心配の向きがあるやもしれぬ。だけど、このグループの曲チョイスのおかげで、全然知らなかった、ここ三十年のJ-POPの名曲を沢山知ることができて、そのあたりに、私としては「前進感」がある。ジャズばかり買っていて、リサーチしていなかった懐かしの八十年代~九十年代の洋楽を今買い足しているのと同じ感覚である。
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by hiyorigeta | 2016-02-22 18:30 | 音楽・ジャズ・オーディオ | Trackback | Comments(0)

荷風散人宜しく金沢をぶらぶら歩きしたり日々の生活をつぶやいています。文字ばかりですがご容赦下さい。時々日付をさかのぼってアップしたりします。http://tanabe.easy-magic.com


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