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漱石先生には注意

 テストで「カンニンしてください。」の漢字を聞いた。答えは、もちろん「堪忍」。「勘弁してください」と意味的によく似ている。何がちがうのだろうとネットで検索した。
 「堪忍」のほうは、漢字通り「堪え忍ぶこと」なので、相手の言い分がまったく不合理で納得できなくても堪え忍ぶというニュアンスなのに対して、「勘弁」とは、相手の言い分に一部合理性を認めるけれど、今回に関しては、赦しもらいたいなんて時に使うという。なるほど、確かに無意識ながら、私もそういうニュアンスでちゃんと使い分けているように思う。

 ところで、間違いの多くは二つを混同した「勘忍」。バツをつけていたら、別の採点者から「これでも丸をつけてあげてくださ い。」との連絡が……。
 解せないので、辞書やネットで調べてみても、「勘忍」を許容とする説明はない。それで、その方に判断の出所をきいたところ、「出題した問題集の本文がそうなっています。」とのこと。見ると、確かに。
 本文の出典は、夏目漱石の「それから」。 
 漱石先生の文章かあ。やられた~。
  漱石先生の当て字・誤字は、業界(?)ではつとに有名。一番有名なのは、サンマ(秋刀魚)を「三馬」と書くやつ。この手のことには無頓着な御仁である。
 問題集は、漱石先生の原文通り載せている。
 ということで、これに気が付かなったこちらが悪いということになるのだが、出題意図としては、「「勘弁」と「堪忍」はよくにているけど、漢字が違うんだよ。」ということを問いたかったので、この漢字問題、意味をなさなくなった。
 ちなみに、解答のほとんどは間違いのほう。漱石先生と同じ。「堪忍」と正確に書けた人は一クラスに数人しかいなかった。

 それにしても、前にも書いたけど、近年、登場人物の名前を間違えて書く人が増えてきたなあ。今回も、代助を平助、三千代を三代子とか、名前を勝手に創作している。
 なぜ、そんな単純間違いするんだろう。
 それと、言葉の使い方のニュアンスが雑になってきたような気がする。例えば、親しい相手に「こうしたらいいんじゃない」という発言は「提案」というのはいいけど、「提言」というのは、ちょっと違うのではないかななと思う。ちょっと大仰しいようにかんじないのかしらん? 
 他に、例えば、この行為は今からするのだから、この答えは「~すること。」であって「したこと。」ではちょっと違うでしょ、といった感じの小さな違和感をいくつも感じた。
 おそらく、日頃、本を読んでいない人は、そういうニュアンスの部分がちょっと怪しくなっているのだろう。採点していると色々気になる。
by hiyorigeta | 2017-05-30 06:10 | 文学・ことば | Trackback | Comments(0)

荷風散人宜しく金沢をぶらぶら歩きし、日々の生活をつづります。テーマは言葉・音楽・オーディオ・文具など。http://tanabe.easy-magic.com/


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