2018年 02月 27日
「平成細雪」(NHK)を観る
今回のNHKドラマ「平成細雪」は、三十五年前の市川崑監督映画以来の映像化だという。確か当時ロードショーで観た覚えがある。雪子が吉永小百合のバージョン。舞台は、これを参考に作られていたはずである。
今回のは、「細雪」の世界を、平成時代の初期に設定してリメイク。上手くできていて感心し、もちろん、四話とも楽しく観た。そのうえで、見た人の「呟き」も、さかのぼって検索し、それらも参考に、今度は細部の描写も見るようにしながら、二度見した。
バブルは崩壊したが、昭和の匂いも残るというのが、この古風な人たちを生かすにはちょうどよい。携帯でコミュニケーションが一変していったから、普及前というのも大事な要素だと指摘している人がいたが、なるほどと思った。
板倉の死や死産など、平成の医療技術だったらなんとかなったはずのところなど、展開上、どうにもならなかったのだろうな、というような微妙な時代との齟齬がないでもなかったが、滅びゆく旧時代の人の物語の中に置くと、大きな違和感は感じられなかった。平成になっているが、時代がかった建物の中でのシーンが多く、戦前の話と言われても通用する背景の中で進むので、視聴者は、「戦前」と古風な「現代」がない交ぜになって、古い文化の中に入り込んでしまい、そんなものとして観ていくからであろう。
それにしても、四人姉妹の性格分けはうまくできていて、原作の雰囲気をよく伝えている。最初に没落を倒産によってはっきり示していること、啓ボンはあんなに一途でなかったはずであることなど、四話におさめるために色々シンプル化を施しているが、成功していると思う。関西のレトロな場所や料理店など、場所のチョイスも神経が行き届いていて、興味深い。
二度見したところ、結構、笑いをとりにいく脚本なんだと感じた。ゆったりした動きの中で気が付かなかったが、コメディ的でもある。
「原作を読んでみようかな」という呟きも多く、手持ちの文庫本を探してきて、表紙を写しているインスタもあった。こんなふうに、谷崎文学が注目されるのは、うれしいことで、自分も新潮文庫版で読んだのを懐かしく思い出された。
四人の女性のことは、自分もよく知っていて、物語の中に入ってお友達にはなれないけれど、陰ながら応援はしているというような、登場人物とのお付き合いを今後深めていきたいなあと思う。もともと、私はそういう人であったはず。
これは、トランスジェンダーを扱った作品。男が女の格好をして生きていくなかで、職場、友人、故郷の家族との関係など、ぶつかる壁を我々に見せてくれる。途中、あまり役者としてお上手でないジェンダーの友人が出てきたが、あれ、クレジットの「ジェンダー指導」の方の名前と同じということを見つけて、この役の人が現場でジェンダーの監修をしていることに気が付く。