「出来」

(蔵出し。去年八月の文章。)
 昨年の民放ドラマで「重版出来」というのがあった。もともと漫画が原作で、コミック出版業界の裏側をコメディタッチで描いている。色々な壁にぶち当たりながら新米の女主人公が一人前になっていく過程が見所。どこにでもいそうなお嬢さん、黒木華が主演。
 このタイトル、「じゅうはんしゅったい」と言っていた。重版が出来るということは売れたということだから編集者にとって目出度いこと。縁起物の言葉。ただ、この時、私は、「へえ、「出来る」ということを、この業界では「しゅったい」というのか」といった程度で思っていた。「来」は普通「たい」と読まないしねえ。つまり、私は「業界専門用語」だと思っていたのである。
 ところが、先日、素人芝居を観ていて、この言葉がやたら出てきた。出し物は「修善寺物語」。

 五郎「なに、面(おもて。お面のこと)は、すでに出来(しゅったい)しておるか。」


 あれあれ、この言葉は古くから世に流通しているらしいぞと、その時、初めて気がついた。そこで、辞書をくってみた。

「しゅつらい」からの音変化で、1 事件が起こること。「珍事が出来(しゅったい)する」 2 物事ができあがること。「近日中に出来」「重版出来」


とあった。例文にもある。どうやら普通の言葉のようである。
 おそらく、日本語には、普通に訓読する漢字を、わざわざ格好つけて音読するという読み方のパターンがあるので(大抵の場合、漢文調の流れ)、それのひとつなのだろう。音変化が途中起こったので、猶更、分かりにくくなった。
 華ちゃんの童顔といっしょに、この一語、覚えました。


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by hiyorigeta | 2018-04-27 22:38 | 文学・ことば | Trackback | Comments(0)

荷風散人宜しく金沢をぶらぶら歩きしたり日々の生活をつぶやいています。文字ばかりですがご容赦下さい。時々日付をさかのぼってアップしたりします。http://tanabe.easy-magic.com


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