古典落語の「らくだ」と「井戸の茶碗」を、山田洋次がうまく組み合わせて前進座の芝居にしたもの。元落語らしい楽しい笑いの起こる芝居で、ちょっとやそっとで笑わなくなった年寄りばかりの観客も大いに笑っていた。最近では珍しい。
いつものようにお囃子など歌舞伎仕立てになっているのが、逆に安心の設定という感じで、そうした古典的なフォーマットの中で、大流行のチコちゃんのセリフ「ぼーっと生きているんじゃねえよ」が出てきたり、死人のダンスの部分には、去年大ヒットした「USA」ダンスがあったりと大サービスがあって、その落差が笑いとなる。
寅さんの啖呵売「結構毛だらけ~」も出てきて。お囃子が、あの山本直純作曲の有名なテーマソングを奏でるといった具合に、寅さんリスペクトがところどころあったが、もちろん、山田さんが作ったお芝居なので、引用しやすかったのでしょうねえ。
いずれにせよ、若い二人の恋も成就して、楽しい人情芝居でした。
休憩が二回あって、終了が十時近くになって、最後はお尻の浮いている人もいた。歌舞伎の五時間コースではないし、もう少し、歌舞伎芝居によくある、筋をストップさせて引っ張っている部分を刈り取って短くしたほうがいいような気もした。
パンフを観ていると、いつの間にか、七尾市の例会がなくなり、石川県は二回公演だけになっていた。富山は高岡・富山・魚津・砺波と計七公演あって、同じような県人口のはずなのに、淋しい限り。(2019・7・20)